• 01/31/2026

静かな森と都市の明かり・・・ グローバルな政治経済秩序を考える

新しい平和と繁栄の条件。国境を超えて、市民にふさわしい秩序を築く。  グローバルな政治と経済のダイナミズム、国際政治経済学を学ぶ人のために。

IPEの想像力 4/28/2025

LED照明スタンドの価格が1960円から1万6000円まで大きな違いを示す世界に、私はとまどいました。しかし、松下、日立、サンヨー、シャープ、日本の家電産業が消滅するのは当然であると、市場の原理を説く気持ちにはなりません。

優れた冷凍食品で、名店の中華料理が味わえる、レンジでチンする世界に、私は圧倒されます。技術革新、インターネット、グローバル・サプライ・チェーン。

AIがその変化をさらに加速し、他方で、ドナルド・トランプはこれを阻もうとしています。彼がどれほど悪意と偏向した性格に支配された文明の破壊者であり、普遍的な人間の権利や協力の仕組みを侮蔑する破壊者であっても、今、この世界に対する不満と狂信を集め、社会の底辺からハイテク大富豪にまでいたる政治的な連合運動を組織した天才であることも、認めるしかありません。

ゼミの合宿に行ってもあまり話し合わない学生たち。講義に来ても黙ってスマホをのぞく学生たちに、私は不満でした。しかし、講義にだれも参加しなくなると、それどころではなく、焦りました。あきらめる気持ちと、逃げられない宿命のような敗北感が湧きました。

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NHKニュース ・・・日立製作所の徳永俊明新社長は、変化(革新)する日本企業の強さを示したい、という。社員の半分以上がノンジャパニーズ。鉄道・電力などのインフラで、デジタル化と管理能力に強さがある。国内売り上げは4割程度。US、中国、EUに拡大。物の調達はできるだけ国境をまたがないようにしている。

がっちりマンデー ・・・三重県の住友電装はワイヤーハーネスを作る世界のトップメーカーである。電線にテープを巻いて絶縁する作業はすべて手作業で行われる。低賃金の国に移転しないのか? トヨタの周辺に立地した自動車関連の企業で、ワイヤーハーネスの生産を行う企業が独立した。今は、世界の30カ国以上に工場があり、25万人を雇用する。売り上げは2兆円。

NHKの、米作りをあきらめない農家の話 ・・・田んぼの所有権と区画整理の合意を形成した。追肥と一発肥料との違い。農耕機械の高額化で負債が増えた。若手に農機具の共有制度。原発事故の風評によりインターネット販売の需要がなくなり、地元の理解ある消費者に市場を見出す。

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さまざまな変化による複合的な化学変化が、私たちの人間性や「幸せ」の感覚(そして、不安や正義)も変えてしまうのではないでしょうか。

自分であることの意味を見出せなくなった日常(と世界の景観)を、否定したい、という気持ちが広まるのは避けられない。革命的な保守主義、とよばれるような思想や運動が支持される時代を、意図せぬ形で文明世界は準備していたのではないか。

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David Brooks, Producing Something This Stupid Is the Achievement of a Lifetime, NYT April 10, 2025 「私たちがスクリーンに時間を費やすにつれて、かつて私たちの文化の中心にあった価値観、つまり生涯を通じて知恵と判断力を高めるために努力すべきという考えを捨て去りつつあるのだ。」

Ross Douthat, An Age of Extinction Is Coming. Here’s How to Survive, NYT April 19, 2025 「大学生がスマートフォンサイズの段落よりも長い文章を読むのに苦労し、ハリウッドがYouTubeやTikTokとの競争に苦戦している時、まさにそれが小説や映画といった伝統的な芸術形態を圧迫するボトルネックなのだ。」

「人々が夫婦となり子孫を残さないために、国家は高齢化し、衰退し、やがて東アジア、ラテンアメリカ、そしてヨーロッパに人口減少が押し寄せる時、それはボトルネックの最後の締め付け、最もきつい部分、文字通りの死滅なのです。」

Jacob Silverman, Welcome to slop world: how the hostile internet is driving us crazy, FT April 19, 2025 「これは、インターネットプラットフォームがユーザーを惹きつけ、価値を搾取し、そして物事が崩壊するにつれてユーザー体験を劣化させていくプロセスである。」

「敵対的なインターネットは、人類の最も重要な発明の一つが、なぜこれほど多くの繁栄、不平等、混乱、社会的大変動を同時に生み出したのかを説明する魔女の調合物である。」

By onozn

大学で30年教えたあと、2025年春に定年退職しました。社会とのかかわりを模索中です。できることなら多くの街で仕事を経験したい。 「IPEの果樹園」を継続し、世界の政治経済に生じる変化を追いながら、本当に好ましい生活と社会の在り方を探そうと思います。

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