米中が100%を超える関税引き上げ、貿易戦争をエスカレートさせたことは、日本の企業や政府に何をめざせばよいのか、苦悩をもたらしました。
トランプ政権がめざすものが、米中のデカップリングであり、中国を排除したグローバル・サプライ・チェーンに向けた世界貿易システムの再編成に見えます。そうであれば、中国における工場は売却し、中国市場での売り上げ、一層の販売拡大戦略はあきらめるしかないでしょう。
しかし、グローバル・サプライ・チェーンを中国抜きに構築することは、多くの分野でむつかしい、事実上、不可能と見られています。トランプ大統領の真意は、中国との貿易をアメリカに有利な条件で合意することだ、と思われます。交渉への刺激を与えた後、米中貿易は新しい条件で再編され、拡大するわけです。
トランプ政権内部では、異なる派閥間で権力闘争が続くと思います。連邦政府や司法システムを解体するMAGA運動や、対中軍事衝突をエスカレートさせて再軍備に向かう強硬派、再選のための企業・富裕層に有利な減税でトランプ支持を正当化する議会共和党派、暗号資産やAI×ロボット、ハイテク投資への加速をめざすテクノリバタリアンなど、トランプ大統領が対立を煽り、支配権を誇示する宮廷政治です。その中で、今、ベッセント財務長官らの考え、アメリカ金融システムの強化を将来のグローバルな覇権維持における基軸とみなす勢力が優位を占めている、と見るなら、その中に日本の《活路》はあるでしょう。
NHKスペシャル「米中対立 日本の“活路”は」5月18日を観ました。後半だけですが。
斎藤ジン氏は、トランプ政権を越えて、共和党・民主党のどちらの大統領が継承しても、米中の冷戦は続く、と主張しました。同時に、技術革新と産業構造の大転換がもたらすチャンスを逃すことで日本は停滞を選ぶ余裕はない、と示唆します。他方、地経学の視点で塩野誠氏は、企業が(そして日本政府も)米中のどちらに偏ることも好ましくない。どちらとの関係も死活的に重要だ、と考え、コウモリのように行動するしかない、と主張します。それが成功するための条件は、技術や製品がアメリカにも、中国にも、《不可欠》であることです。
アメリカ政府は日本を完全に冷戦構造に閉じ込め、産業・金融構造においても重要な決定権を確立し、冷戦に勝利したい、と考えるでしょう。しかし、日本に限らず、世界の国々は冷戦構造に囚われることを望みません。
ウクライナと台湾が、陸と海の2つのヤマアラシ戦略によって、平和を護る灯台となる世界において、米中戦争を抑え、国際システムの平和的な調整を実現する、指導的な役割を日本が担うことです。