参議院選挙の結果に影響した新しい要因は何だったのか?
●東北地方で自民党が全敗した。農家が米価高騰への対応に不満を表したのか。米価抑制が都市票獲得に失敗した。
●1人区で自民党が大きく負け越した。野党間の協力が成功した。立憲民主党の政権を担う能力が示された。しかし、ポピュリスト型新興勢力には勝てなかった。
●参政党が多くの選挙区で保守票を自民党から奪った。政権批判・不満の投票先を立憲民主党から奪った。イギリス保守党を追い込んだUKIPとBrexitを連想させる。
●国民民主党が支持を拡大した。《現役世代の手取りを増やす》キャンペーンが成功した。政治の評価基準を、働く現役世代の生活改善に絞った。
● SNSを通じて、体制についての不満、旧支配政党が現状を変えることに失敗した、という政治不信が投票につながった。
● NHK党やれいわ新選組、維新など、新興政党は、政策と支持層を固めることがむつかしい。新々勢力の参入、攻撃的な党首が乱立する傾向を示した。
●円安と文化的保守層の政治化、旧民主党と石破政権への不信は、安倍長期政権の遺産と考えられる。旧左派・リベラルが解体した後、旧右派・保守層も解体し始めた。
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分裂状態を自分たちの勢力拡大に有利をみるなら、今後も既存政治勢力を解体し、ネットによる分断・対立が加速するだろう。SNSの世界では、自民党、立憲民主党など、すでに存在しない。
政策への反対意見について、メイン・メディアからの「攻撃」を受けた、と情報を拡散した参政党が支持層の動員に成功した。
それは触媒となって、新しい民主政治が誕生するのか?
だれでも政治に参加できる。新興勢力には大義がある。米英型の2大政党制をモデルにした日本の政治改革は失敗し、ヨーロッパ型の多党制、ポピュリスト運動が支持されたように見える。
SNSの動画拡散で新政党の参入ハードルが下がった。旧政治は解体したが、物価高に対する対策が減税や給付金では、問題の解決にならない。不満を表明しても、現実を変える新しい政策や所得水準の引き上げ、成長の条件を示していない。
反グローバリズム、外国人排斥、日本人ファースト。地方における自民党支持層の切り崩しはBrexit・トランプ型の政治混乱を予感させる。
ドナルド・トランプ、ロシア、中国、北朝鮮、債券市場、高齢化、人口減少、インターネット、IT・AI投資ブーム、ゲーム・コンテンツ産業など、政治の条件が変化した。政府・中央銀行のマクロ政策には限界がある。《成長と再分配》に依拠して旧政治のために代表の数を争うことが無意味になった。
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NHK受診料への不満、オーバーツーリズムへの不満、就職氷河期世代の強い不安、雇用や住宅に関する若者の不満、それらに応える政治勢力を形成するメカニズムがインターネットの普及で試されている。
外国人との対立を煽る。社会保障の負担をめぐる世代間の対立を煽る。米農家の所得補償で地方と都市との対立を煽る。円安や関税交渉をめぐって自動車産業・輸出と内需との対立を煽る。防衛費をめぐって中国、韓国、アメリカとの対立を煽る。
新しい政治に向けた新政策や制度の刷新、国民の参加を促す前向きな議論によって、自分たちのアイデアに対する支持拡大を競うのか?
財界と官界、自民党の支持基盤や日本のガバナンスが問われている。安定した雇用と衰退地域の再生、技術革新や再生エネルギーへの転換に向けた国内投資を重視する、日本型の資本主義が誕生するか?
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ドナルド・トランプと円安の影響、秩序の解体を考える。ネット広告・詐欺やブランド消費と同じように、政治の投票メカニズムが変質した。
新しい《ケインズ主義》をさがす。それは、市場と政治、制度改革をつなぐ、国民国家と民主政治を超える。消費と投資・資本市場の関係に集約できない、参加と発言の効果を検証できる時代が来る。
すぐに、明日にも、ポピュリスト傾向を示す分断政治に対して債券市場が叛乱し、新しい政治指導者たちは対処する能力を問われる。ここでもUKが参考になる。緊縮財政か、戦時の価格統制・資本管理か。諸党派の論争は、政治経済モデルを革新するか。