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静かな森と都市の明かり・・・ グローバルな政治経済秩序を考える

新しい平和と繁栄の条件。国境を超えて、市民にふさわしい秩序を築く。  グローバルな政治と経済のダイナミズム、国際政治経済学を学ぶ人のために。

高市政権についてGeminiとの対話:感想(2)国際通貨システム

[ note 2025年11月7日 09:30 ]

  1. ヴァーチャル講義11:高市政権についてGeminiと対話した
  2. Geminiとの対話(続):私からの質問
  3. Geminiとの対話:感想(1)円安と二重経済(分断)
  4. Geminiとの対話:感想(2)国際通貨システム
  5. Geminiとの対話:感想(3)ドナルド・トランプ

現在、為替レートは民間資本の大規模な国際移動によって変動しています。
名目為替レートは、ドル建GDPや賃金水準を比較する上で重要ですが、産業の競争力や庶民の購買力、生活水準をみるには、実質実効為替レート*が適当です。
* 「実効為替レートとは? 円の水準で見る日本の国力」 野村證券・山口正章 https://www.nomura.co.jp/wealthstyle/article/0479/
* 日本銀行 https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/fm09_m_1.html

私には国際通貨システムと通貨危機に特別な思いがあります。

国民国家に分割された世界を、主要国が政策協調することで安定化し、成長と雇用を維持する能力を高められる**。
通貨危機は、支配階層が市場を歪め、構造改革を通じて民主的に解決すべき問題を、破局に至るまで悪化させた結果である。
アジア通貨危機、アルゼンチン、アイスランド、ユーロ危機、あるいは、日本のバブル崩壊について本や論考を読み、調査しました。

国際通貨システムは、異なる通貨を持つ諸国が、自律的な金融・財政政策をとりながら、国家間に生じる経常収支の不均衡を、合意された為替レートの水準変更で「調整」するように促す、主要国による貿易・投資・決済のシステムです。
その基本は、R.I. マッキノンの『ゲームのルール』に簡潔に整理されています。

1970年代は、国際通貨システムに関するさまざまな改革論が現れた時代です。(私は1979年に大学に入り、1983年に大学院に進学しました。)
リチャード・ニクソンの金・ドル交換停止で、1971年にブレトンウッズ体制が崩壊したからです。

ジェイムズ・ミードが、内外均衡の達成するために為替レートを調整するケースを明確に分類していました。
しかし、その後、論争は周辺部の小国とユーロ圏をのぞいて、ほぼ消滅しました。
主要諸国が変動レート制を採用し、他の諸国は主要通貨に固定し、ときには通貨危機を経て、その水準を変更したからです。
現代の金融市場は国境を越える取引を急速に増やし、為替レートを政策手段として決定することが困難になっています。
それは、調整(政策・過程)を問わない《市場原理主義》であり、長期的な構造変化にとって好ましくない、と私は思います。

為替レートを介して金融政策が強い効果を発揮する変動レート制を、中央銀行の独立性とともに、広めたのがグローバリゼーションの時代でした。
しかし、対外不均衡を資本の合理的な国際配置とみなすことは、必ずしも、正しくない。すなわち、円滑な調整を促さない。
特に、小国におけるバブルと通貨危機がそうです。
あるいは、アベノミクスのように、国内の改革に行き詰まり、円安を政治利用するケースです。

資本規制と、為替レートの安定的な調整、財政政策による内外の不均衡に対する政府の責任を明確にするシステムを実現すべきではないでしょうか?

かつてR.N. クーパーは、将来の国際通貨システム***を、全く違う視点で展望しました。
開放経済において相互依存を深める民主主義諸国が、金融政策を協調することで、もっと効果的に安定化と構造調整を支援できる。
主要国が共通通貨を採用し、各国・地域では財政政策をより柔軟に使って不均衡や不況に対処するだろう。

今、社会保障を重視するEUの財政規模は、アメリカに比べて大きいが、EU加盟諸国間の財政移転は非常に小さい。
そのため、ユーロ圏内の財政政策は十分に機能していない、と批判されます。
日本は、二重経済下で、地方と都市との間には不均衡と不平等が拡大しています。
共通通貨で、地域間の財政移転を積極的に行う日本が、成長と雇用を高める地域統合型の《成長モデル》を示すことは、国家を超える安定化にも貢献すると思いました。

しかしGeminiは、円高政策の転換、為替レートの管理について、直ちに直面する問題を指摘しました。

A. 根本的な問題:市場原理への介入と金融政策との矛盾

為替レートのコントロールの難しさ: 日本が目指す円の水準(円高水準)を維持するには、中央銀行(日銀)が金融政策の独立性を犠牲にして、為替レートを事実上コントロールする必要があり、これは日銀法上の原則に強く反します。また、事実上の**為替介入(円買い介入)の強化は、他国から「為替操作国」**と見なされ、国際的な反発を受けます。

金融政策との致命的な矛盾積極財政を支える低金利の維持と、円高を実現するための**金融引き締め(利上げ)**は、両立不可能です。政府が円高を志向し、日銀が利上げに踏み切れば、積極財政の財源(国債)の金利が急騰し、財政が破綻的な危機に陥ります。

B. 技術的な障害:安定化システムと基金の限界

為替安定化基金の規模と持続性: 為替レートの変動を安定させるには膨大な外貨準備(円買い資金)が必要で、その原資を不安定な為替介入の利益に頼ることは不十分です。また、企業が既に持つ為替ヘッジ手段と重複し、モラルハザードを招く可能性があります。

地域通貨圏の実現可能性の低さ: 日本国内では既に統一的な金融政策が存在し、経済構造も異なるため、「地域通貨圏」の導入は構造的なメリットが薄いです。

Gemini(が集めた論考)はおそらくプラザ合意に関するマイナスの評価を重視していると思います。
あるいは、変動レート制に対するプラスの評価です。

ある国際会議をまとめた論文集に、リチャード・クーパーの<名言>を私は見つけました。
国際通貨システムを評価するとき、重要な基準はPPPである、というのです。
しかし、それは「購買力平価 Purchasing Power Parity」ではない。
「平和 Peace、繁栄 Prosperity、参加 Participation」である、とクーパーは会議で述べました。

民主的な社会にとって好ましい国際秩序の核心には、それにふさわしい国際通貨システムがある、と思います。
私は「主要通貨間の安定化、地域通貨圏、為替レート変動に対する安定化基金、国内の零細企業や労働者の失業・転職に支出する」メカニズムを備えるべきだ、と思いました。

Geminiは、為替レートの長期的な安定化に国際合意することは、①アメリカの利益ならず、②中国の台頭で国際合意がさらに難しく、③日本のパワーが低下しており、④高市首相の発言と矛盾する、と指摘しました。

一度だけ、クーパーに質問に行きました。
なぜクーパーは、J. ウィリアムソンの目標相場圏***やBBCを支持せず、B. アイケングリーン***を勧めたのか。
私は疑問に思いました。
おそらくそれは、政治に対する現実的な評価、政治的なコンセンサスは持続しない、国際通貨システムの基礎になりえない、という苦い経験があったのではないでしょうか。

今、トランプ政権は「マール・ア・ラーゴ合意」とよばれる国際通貨システムの変更を議論しています。
まさに、プラザ合意Ⅱ、として比較されます。
トランプは、製造業の復活と輸出を伸ばすために、ドル安を望む。しかし、ドル離れを許さない。むしろ、ドル建債券を大量保有し、アメリカに安全保障を依存している諸国に、ドルのネットワークを利用することに課税し、債務の負担を軽減する(永久債に転換)。

ロナルド・レーガンとドナルド・トランプは、その貿易(保護主義)に対する考え方と同様に、為替レートやドル(国際通貨システム)についても大きく異なります。
トランプのアメリカを観て、金融グローバリゼーションと円安に依存する成長モデルを、日本政府は再考しなければならないと思います。
それには、ドル体制後の、国際通貨システムを構想する力が求められます。

** 最近の優れた考察として、VoxEU / 19 Aug 2025 How Donald Trump should have tackled the US trade deficit Vijay Joshi, David Vines を参照してください。
私のホームページで紹介しました。
https://ipe-world.world/garden/

#5 What do you think? – 静かな森と都市の明かり・・・ グローバルな政治経済秩序を考えるipe-world.world

*** リチャード・N・クーパー『国際金融システム:過去・現在・未来』
ジョン・ウィリアムス『為替レートと国際協調:目標相場圏とマクロ経済政策』、『国際通貨制度の選択:東アジア通貨圏の可能性』
B. アイケングリーン『21世紀の国際通貨制度:二つの選択』、『国際金融アーキテクチャー:ポスト通貨危機の金融システム改革』

By onozn

大学で30年教えたあと、2025年春に定年退職しました。社会とのかかわりを模索中です。できることなら多くの街で仕事を経験したい。 「IPEの果樹園」を継続し、世界の政治経済に生じる変化を追いながら、本当に好ましい生活と社会の在り方を探そうと思います。

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