ウクライナや台湾を観て、アメリカと中国が支配する世界(G2)を恐れるのはまだ早いでしょう。世界の次の秩序を決めるのは巨大企業(GAFAなど)かもしれないし、気候変動や食糧危機、大規模移民・難民、新しい感染爆発、民主的な秩序の崩壊(内乱、破綻国家)かもしれません。
歴史書が示すような深刻な危機が、しかも重なって起きると警告されています。根本的な違いは、困難な状況を協力して乗り越えるのか、互いを攻撃し、戦争状態に向かうのか、という政治的に分断された人類の姿勢です。
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アメリカのAIブームは、歴史上の「産業革命」のように、テクノロジーにとどまりません。人工知能がさまざまな製品や日常生活の中へ急速に浸透し、法律や制度、政治の分断、資本市場、独占、詐欺や窃盗、内外における貧富の差、文化戦争、潜在意識や思考方法、欲求、結婚、出生率と人口動態など、まったく新しい姿に変えつつあります。
The Economistの記事は、中国のAI開発をアメリカのような巨大企業の閉鎖体制による独占ではない、参加者を増やし、革新を刺激するオープンなシステムとして称賛します。中国にできたことが、なぜヨーロッパや日本にはできなかったのか?
トランプによる脅迫と攻撃を強く意識してヨーロッパが推進しているように、日本も独自のイノベーション文化や風土を形成するべきでしょう。そのためにも、アメリカの独占企業が支配する体制を監視・規制する明確な権限と能力を確立しなければなりません。それは同時に、中国のイノベーションが示した制度や経験から学び、積極的に協力することで得られるでしょう。
米中に対抗するオープンなAIの利用と分散型の開発競争を指導することで、巨大企業や独裁的権力に対抗して、民主的な秩序と、G2を超える国際協力の可能性をひろげることが重要です。
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核兵器が現れたとき、戦争による覇権の循環は終わった、と思われました。大規模な核戦争の破壊と殺戮によって生き残る指導者は一人もおらず、戦争を回避することが優先されるからです。
しかし、AIが組み込まれた戦争は、必ずしも核兵器を使用しないでしょう。核兵器の限定的な使用や、情報ネットワークの妨害、ドローンや無人兵器による、領土や人ではなく拠点(エネルギー、データ、食糧、水など)の制圧によって、圧倒的な優位を築く戦いが始まると思います。
しかし、米中が参加する戦争が起きた場合、世界は急速にG2秩序に向かうでしょう。それは新しい世界帝国の出現と、戦争がAIの浸透を加速する結果で終わると思います。
今なら、人類が協力するためにAI開発を方向付け、オープンな民主的秩序が尊重される未来に進む道も残っているはずです。