山本周五郎の名作「ちいさこべ」を読んだことがありますか?
火事で家と両親をなくし、孤児になった子供を集めて育てる、自分も両親と店を失った茂次と、それを助けるおりつの話です。
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戦争、あるいは、安全保障の焦点は再び変わりました。
核による脅迫、エネルギー・資源の争奪戦、輸送路・通信インフラ、半導体・AI開発競争、ドナルド・トランプのモンロー主義。それは、第1次・第2次世界大戦の帝国主義と世界分割が、冷戦終結の「歴史の終わり」、西側世界とその他世界の「文明の衝突」に代わってから、今や、グローバルな民主主義拡大と法の支配をめざす国際秩序が力を失いました。米中の対立が民主主義体制の崩壊と主要な軍事対立を予想させます。
マリアナ・マッツカート、ライナー・カッテルは説明します。
「結局のところ、多くの西側諸国の経済は、不平等、金融化、炭素集約化、そして政治的脆弱性を増しながら成長してきました。成長はイノベーションと繁栄を促進する一方で、環境破壊、社会の分断、地政学的不安定化を助長する可能性もあります。成長はミッションの目的ではなく、指標であり、目的から切り離された指標は危険を伴います。」
中国の貿易黒字が1兆ドルを超えたことは、中国と主要貿易国との間で、素晴らしい技術移転や投資をもたらし、安全保障を含めて、世界の厳しい現状を改善する方向付けを示しているとは、残念ながら、言えません。むしろ、米中対立やウクライナ=台湾危機、世界経済の不均衡から金融市場のパニックや世界不況を懸念すべき事態と思います。
日本が「サナエノミクス」の円安+金利上昇で懸念されるのは「トラス・ショック」もしくは新興市場の債務危機に似たパターンです。
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気候変動の危機、地政学的対立、富の分配の不平等、イノベーションと雇用の危機、低成長と分断による民主的政治の危機、貿易と金融の不均衡、投資(そして債務)の熱狂的な偏りがもたらす危機、それらには世界と歴史の形を変える力がありそうです。
ロンドン・コンセンサスが、グローバリゼーションを導いた「ワシントン・コンセンサス」に代わる新しいガバナンスの要件として注目されています。
ダニ・ロドリックは説明します。
「新たなコンセンサスの第一の要素は、経済力の集中が行き過ぎているという認識です。この懸念は、様々なグループによって様々な形で表明されています。所得と富の不平等、そしてそれが政治に及ぼす悪影響について直接的に訴えるグループもあれば、市場の力と競争への悪影響を懸念するグループもあります。また、金融化と、それがもたらす経済的・社会的優先事項の歪みこそが主要な問題だと考えるグループもあります。」
「新たなコンセンサスの第二の要素は、新自由主義によって置き去りにされた人々と地域の尊厳を回復することの重要性です。この課題には、良質な雇用が不可欠です。雇用は単なる収入源ではありません。アイデンティティと社会的認知の源泉でもあるのです。良質な仕事は、強固な中流階級を支えるものであり、社会の結束と持続可能な民主主義の基盤です。」
保守政権は迷走し始めています。日本ブームを、時代劇から、「ちいさこべ」の理想を広める形で、地域の子どもたちの幸せと安全保障を高める、2025年の民間協力キャンペーンに方向転換してはどうですか?