[ note 2025年9月3日 05:53 ]
2016年のドナルド・トランプ当選について、パンカジ・ミシュラが観たアメリカを、私は思い出します。
「ポピュリズムの土壌を耕したのはだれか。」・・・「世界は最善の姿になる、とアメリカの政治、ビジネス、ジャーナリズムの指導者たちは訴え続けた。9・11でさえ、イラクとアフガニスタンの血みどろの失敗でさえ、大恐慌以来、最悪の経済危機でも、アメリカ化する世界への信念を消せなかった。」
こうした楽観的なご都合主義者たちをついに粉砕したのは、2016年、大統領選挙で「アメリカの殺戮」を語ったデマゴーグ、ドナルド・トランプであった。
「アメリカは悲劇的な社会紛争や衝突に免疫がある、というこれまでの信仰を打ちのめした。」 拙著『ブレグジット×トランプの時代』124頁
トランプの支持基盤は、まったく異なる諸集団の糾合だと思います。
● マイノリティーになることを恐れる(貧しい白人)労働者たち、
● ハイテク起業家・超富裕層、
● トランプをキリスト再誕に結びつけるキリスト教右派、
● 小さな政府を求める旧来型共和党支持者たち、
● ウォール街の金融ビジネス・超富裕層、
● SNSで広まるMAGAの陰謀論者・文化戦争の信奉者たち、
● 工業力から軍事・テクノロジーに及ぶ米中覇権争いを重視する者、
● 遠くの戦争に巻き込まれる安全保障条約・外交に反対する者、
● エスタブリシュメントの新自由主義、グローバリゼーション、格差の拡大に反発する人たち、など。
トランプは、さまざまな論争点を取り上げ、敵を攻撃します。
反移民、反軍事介入・安全保障の肩代わり、反気候変動論・脱化石燃料、反ワクチン、反エリート文化・目覚めたリベラル派(LGBT、DEI:多様性、公平性、包括性、大学)
貿易赤字の是正や関税、ドルの支配強化も、それらの中で矛盾する争点です。
貿易の自由化や金融市場統合は、安全保障と同じく、アメリカのリーダーシップによる国際公共財の供給として正当化されました。
覇権安定論と移行期の不安が、C. P. キンドルバーガーの考えた健全な、善意の、指導国が失われるとき、生じます。
それは中国の台頭より、トランプの権力掌握で加速しました。
ドナルド・トランプの権力欲が、アメリカの築いてきた国際秩序に及ぶとき、秩序の性格が根本的に変わるのを目撃します。
https://paulkrugman.substack.com/p/talking-with-henry-farrell
Talking With Henry Farrell
Weaponized interdependence and tech bro ideology, oh my
Paul Krugman
Jul 26, 2025
ヘンリー・ファレルとの対談:武器化された相互依存とハイテクブロ・イデオロギー、ああ、なんてことだ
「アメリカが世界経済を支える基盤インフラを武器化してきたいくつかの方法を、今後もさらに強化していく可能性がある」
「価格で顧客基盤を構築し、その後、顧客から搾り取る手法」
アメリカは世界の決済システムと主要テクノロジーを支配している。
「高性能半導体への中国のアクセスを事実上遮断し、最高品質のAI開発への取り組みを阻止しようとする」
「シリコンバレーには2015年、2016年まで、世界を一つにつなげれば、自由で素晴らしい世界が作られ、最終的には中国共産主義が崩壊し、独裁者が破滅するという、シリコンバレーが自らについて語る物語がある」
「個々の創設者が基本的に自分の価値観に従って命令を下すことができる、マイクロ国家、あるいはマイクロネットワーク国家が多数存在し、社会崩壊の世界が到来する」
「彼らは自分たちが偉大で英雄的な世界の改革者であるというビジョンに触発されている」
「数年後にはデータセンターに天才たちが集う世界が到来し、従来の研究施設はもはや必要なくなる。なぜなら、人間の知能よりも強力なAIが、私たちに代わってあらゆることを実際に解いてくれるからです。」
PS Aug 1, 2025 The US Is Now an Extractive Superpower Moreno Bertoldi and Marco Buti
NYT Aug. 1, 2025 Behind Trump and Vance Is This Man’s Movement
By Ezra Klein
アメリカの右派は南北戦争の敗者側の社会を再建する思想を唱える。
グローバルな右派の思想にもなるのか?
美徳を唱えるナショナリズム。
未来よりも過去の理想を共有している人々の集まり。
オバマの理想をマイナス社会の原因とみなす。ディストピアのアメリカ。
NYT Aug. 12, 2025 Democrats Delivered Millions to Texarkana. It Didn’t Matter One Bit. By Thomas B. Edsall
Yanis Varoufakis, Will Trump’s Working-Class Base Turn on Him? PS Aug 18, 2025
Marietje Schaake, Beware America’s AI colonialism, FT August 20, 2025
2025年の最初のThe Economistは、ドナルド・トランプの経済政策をハイリスクだがハイリターンの賭けである、という記事を載せました。トランプが失敗するとは断定できない。
Tech is coming to Washington. Prepare for a clash of cultures The Economist January 4th 2025
「テクノロジー企業が初めてワシントンに進出し、その世界観はMAGA運動と著しく相容れない。こうした緊張関係がどのように解決され、誰が優位に立つかは、今後4年間のアメリカ経済と金融市場に大きな影響を及ぼすだろう。」
「MAGA運動は過去のビジョンの復活、つまり製造業の全盛期への不可能な回帰を願うのに対し、テクノロジーは未来を見据えている。テクノロジーは進歩を加速させ、社会を破壊し、MAGAが切望する世界をますます遠くへ追いやろうとしているのだ。」
しかし、すでにイーロン・マスクが唱えたテクノロジーによる「政府の効率化」は失敗しました。
規制緩和とイノベーションが、どれほど社会を破壊するとしても、財政赤字やドル不安を解消する魔法の杖にはならないでしょう。
危機を繰り返しながら、トランプの政治ショーは続きます。
国際秩序に残るのは、脅迫と略奪のための帝国システムです。