これは2020年に出版した私の小さな本です。副題は、金融危機と民主主義の溶解、でした。
トランプが2度目の就任式でどのような演説をするのか。
イーロン・マスクやAIの開発競争、ソーシャルメディアが民主主義国家をどのように変えるのか。
第1章 ひとつの冒険
第2章 ブレグジットは起きた!
第3章 タックスヘイブン
第4章 ポピュリズムの広がり
第5章 地政学と大国間秩序
第6章 世界金融危機
第7章 時代のフロンティアで
わたしたちは《時代》を生きている、と思いました。
それは「ブレグジット×トランプ」に顕現した時代です。
「ひとつの冒険」として、だれもが時代の力学、構造的な権力の下で闘い続けます。
この本は、イギリスがEUを離脱(破壊)し、ドナルド・トランプがアメリカ大統領に選ばれる(ヒラリー・クリントンと主流の政治エリートを破る)、ありえないことが起きた意味を考えています。
タックス・ヘイブン × ポピュリズム × 地政学。
これら3つの力が重なって化学変化を起こした、というストーリーです。
この本について、以前、学内雑誌に新刊紹介を書きました。
政治過程を通じて、人びとが社会を変える。ある時代を、支
配的な思想や政治経済秩序として理解する。
ベルリンの壁が崩壊したとき、ロンドンからベルリンに自動車
を走らせて市民たちと抱き合った学生の話。キューバで革命に
失敗したカストロが、歴史に照らして革命の正義を訴えた自己
弁論。ヨハネ・パウロ2世が社会主義国家ポーランドを訪れ、
野外ミサを行った話。高齢のカストロにオバマ大統領が和解の
手を差し伸べ、ローリングストーンズはキューバでロック・コ
ンサートを開いた。
面白い本を書きたい、と思いました。ときに本を伏せて、街
を歩きたくなるような。表に出て星空を見上げ、再び読み返し
たくなるような。そういう本を書きたいと思いました。
東欧諸国が民主化し、ソ連も解体する中で、国境を超えた市
場統合が進む。豊かな社会が広まり、民主的な政府間の協力と
国際秩序の平和的調整も実現する。そういう時代が来る、とい
う期待を、一握りの超富裕層と金融ビジネスの膨張、グローバ
ルな資本主義は打ち砕いた。
経済学は、一方で、イデオロギー、他方で、市場への介入手
段(と自由化)を説く学問です。しかし、市場による解決とは、
富と分配の構造を築く、〈権力〉そのものではないか。それは貨
幣を介して数量化され、物理法則のように分析されても、その
時代の権力闘争や戦争の現実と切り離せない。
国民投票において、人びとの不満と怒りはねじ曲がり、政治
過程の意味を問うた。
その後、パンデミックに寄せて、ある意味では、この本の「第8章」を書きました。
労働者の支持するグローバリゼーションと自律の時代に向けて (上)(下)
パンデミック×ポピュリスト×政治経済学
なぜ学ぶのか?
想像力を得るために。
優れた本は、現実世界に対する批判的な思考を刺激し、人間の能力を鍛えます。
おもしろい意見や論評を集めて、四苦八苦して、書きました。
おもしろいと言ってくれる学生が、いまも、どこかにいると思います。

