第二に、イランの防衛体制が長年に比べてはるかに弱体化していることである。昨年10月、イスラエルを狙ったイランのミサイル攻撃を受けてイスラエルが空爆を実施し、イランの防空網とミサイル生産能力に甚大な被害を与えた。イスラエルは、イランがまだ弱体化している今こそ攻撃の好機だと考えた。
第三の理由は、イランが「ブレイクアウト能力」に近づきつつあったことだ。この能力があれば、イランはかなり迅速に核兵器を組み立てることができる。
第四の要因は、イスラエルが中東を根本的に再構築し、地域の超大国となる能力に、はるかに自信を深めていることだ。
5つ目の理由は、ガザでの戦争と飢饉の危機をめぐり、イスラエルへの国際社会からの圧力が高まっていることである。イランを攻撃することで、ネタニヤフ政権は論点を転換することができ、イスラエルへの批判を強めてきた欧州諸国をイスラエル擁護に向かわせる可能性もある。
6つ目にして最後の要因は、トランプ政権とイランの核交渉に対するイスラエルの信頼喪失である。
イスラエルの攻撃はトランプ政権内の抑制派を困惑させた。
イスラエルがアメリカを不本意にも新たな中東戦争に引きずり込むと見られれば、アメリカは長期的な代償を払うことになるだろう。インフレ抑制に苦戦するトランプ政権も、世界的な原油価格の上昇に動揺するだろう。
もしイランがイスラエルへの直接攻撃に苦戦するならば、カタールやバーレーンを含む地域内の米軍基地を攻撃する誘惑に駆られるかもしれない。しかし、そのような行動は、米国の全面的な戦争参加を確実にするため、逆効果となる可能性がある。
イラン政権はイスラエルと同様に、今や自らの生存をかけた戦いに直面していると感じているかもしれない。イラン国民と地域全体に対し、自らの力を示す必要もある。
エスカレーションのサイクルは始まったばかりだ。
FT June 14, 2025 Why Israel chose to strike Iran now Gideon Rachman