参議院選挙の投票日が迫る中、ドナルド・トランプ大統領は、関税引き上げによる日本の貿易黒字解消、防衛支出のGDP比3.5%、を要求しています。これを、イギリスやEUに対する要求の成果からトランプが学んだ、と考えるのは、もっともな推論だと思います。
NATOの首脳会議は、トランプ大統領のイラン核施設空爆と停戦合意を称賛し、防衛費のGDP比5%目標に合意しました。トランプ大統領がNATO離脱やウクライナ支援停止を主張しないように、対立を避けることが最優先されたようです。
****
日本の政治経済論争が、デフレ脱却からインフレ・物価高対策へ、ある意味で、賃金水準の長期停滞、不平等や格差の問題から、より多様で、解決策の見えない不満と不信、財源を奪い合う対策の複雑な組み合わせへ、変わったように思います。
インターネットが普及し、町の商店街は衰退し、書店、衣服、ふとん、畳、家具、お茶、文具、お菓子、その他を売る、多くの店がなくなりました。ネット依存の子どもたちは、毎日、何時間もスマートフォンを観ています。私たちの不安に対して、政治家は明確なビジョンを示さねばなりません。しかし、それは非常にむつかしいのです。
選挙で与党が議席を減らし、政権与党を攻撃することで票を得たと信じる諸党派が影響力を誇示する政治状況は問題を生じます。減税や給付、規制強化、法改正、防衛費増額、その他について紛糾する国会を観て、財政健全化や国債への信用が失われ、日本銀行と資本市場が緊張する局面に入るかもしれません。「トラスの瞬間」です。
イギリス議会で、与党・労働党内からも多くの反対にあって、自分が提案した予算案を大幅に改変するしかなかったリーブズ蔵相は、スターマー首相の陰で涙を流しました。増税はしない、国民医療サービスを改善する、ロシアに対抗した防衛費は増額しても歳出を見直し、債券市場の不安は断じて生じさせない。しかし、彼女の決意は揺らぎます。
時代に合わせて、財源を見直し、成長戦略を描きながら、弱者のための給付を維持するには、削減のための厳しい選択も必要でしょう。国民に対して、正しいバランスを示すのが民主政治だと思います。すべての政党は、異なるビジョンに向けた勇気、革新的なアイデアを競い合い、ガバナンスの水準を高めるために闘います。選挙と国会を尊重するべきです。
****
MAGAの支持者たちが抱える失業やコミュニティー崩壊の問題は、トランプの大型減税による犠牲となって悪化すると思われます。そのような地域の再生に役立つ象徴的プロジェクトに対して日本政府と日本企業が投資をする、という形で交渉の成果をトランプ大統領が得るよう、石破首相は首脳会談で合意を演出してみるべきです。
日米同盟の性格は、日本においても、アメリカにおいても、常に変化しています。日本の政治家たちは、積極的に議論し、トランプ・ショックに応じて、その再定義を模索しなければなりません。世界貿易の不均衡調整、台湾をふくむ地域の安全保障を描くことで、日本もアメリカへの依存を減らします。
スタッズ・ターケルの『仕事!』1972年を図書館で借りました。1950・60年代に、アメリカの人々が働く姿やその考えたことを知りたい、と強く思いました。たとえ不満を感じても、彼・彼女たちはドナルド・トランプを支持しなかったかもしれません。